「静岡の未来を拓く会」は、変化の激しい時代を主体的に生きていく子どもや若者が育つまちづくりを目指し、「子どもの未来は、私たちの未来 子どもの未来は、しずおかの未来」を合言葉に活動している市民活動団体です。退職した校長や現役の校長をはじめ、教職員、保護者、地域住民、医師など、さまざまな立場の会員が集まり、静岡が抱える教育課題の解決に向けて活動しています。今回は、令和7年度静岡市協働パイロット事業として実施されている「子どもの居場所プロジェクト」(きみの話し相手になり隊)について取材しました。

「静岡の未来を拓く会」では、市民・行政・学校が連携して取り組む市民参加型の活動を目指し、「相談事業(チャイルドサポート相談事業)」「課題解決事業」「理解啓発事業」の3つの柱で事業を展開。現在は、1「共生社会の構築」、2「主体的な学び」、3「不登校」、4「子どもの居場所プロジェクト」、5「メタバーススクール」の5つのプロジェクトに取り組んでいます。
このうち、令和7年度静岡市協働パイロット事業として取り組んでいるのが、4「子どもの居場所プロジェクト」(きみの話し相手になり隊)です。
このプロジェクトは、「静岡の未来を拓く会」で唯一の高校生会員、宮津花梨さん(静岡県立静岡城北高等学校3年生)の提案から始まりました。
宮津さんは、自らテーマを決めて社会勉強をするという学校課題の一環として、「静岡の未来を拓く会」の月例会に参加。2025年3月に開催された市民フォーラム「共に創ろう!希望の未来」において、小学生にとって親しみやすい存在である高校生だからこそ、大人とは違う目線で子どもたちに関わることができると発表。高校生が主体となって子どもたちの話し相手となり、孤独感を抱える子どもたちの居場所をつくるプロジェクトの創設とイベント開催をプレゼンしました。
会場に訪れた市民のみなさんから、多くの共感や応援の声が寄せられ、宮津さんは「静岡の未来を拓く会」の会員とともに企画をブラッシュアップ。その結果、この取り組みは静岡市協働パイロット事業に採択されました。
長尾さん「学校生活に不安を抱いている子どもは少なくありません。そうした子どもたちも含め、小学生にとって大人よりも親しみを感じやすい高校生が遊びやおしゃべりを通して関わることで、気軽に話せる“心の居場所”をつくることが目的です。
宮津さんが月例会に参加したことで、私たち会のメンバーも大きな刺激を受け、意識が変わりました。会のモットーは“やりたいことはやっていい”。宮津さんが『私、やりたいです。仲間を集めます』と手を挙げたことから、このプロジェクトはスタートしました。私たちも、大人が直接小学生と接するよりも、よほど効果的なのではないかと考え、イベントの内容や進行も、宮津さんを中心とした高校生が主体となって進めています」。


プロジェクトでは、まず城北小学校放課後子ども教室「ゼブランド」とともに、「放課後子どもイベント」を7月、10月、12月に開催。実際に子どもたちと過ごす経験を重ねながら、他の学校にもこうした取り組みを広めていくために、市内の小学生を対象とした「ふれあいイベント」の準備を進めてきました。


2026年3月7日に実施した「ふれあいイベント」の企画が大詰めを迎えた1月31日、8回目の企画会議が開催されました。
イベント当日のタイムスケジュールや準備物、人員の配置などの大枠はほぼ決定しており、この日は高校生から提出された、より詳細なスケジュールや小学生との遊びのメニュー、高校生スタッフが守るルール、安全面への配慮などが確認されました。
会議には宮津さんのほか、一緒に活動をしている後輩の望月瑠花さん、苅澤朱音さんも参加。「放課後子どもイベント」での反省点や子どもたちの様子を踏まえながら、イベントを安全かつ円滑に進めるための提案や意見を整理し、大人たちと対等に意見交換している姿が印象的でした。
「イベント運営の主体はあくまで高校生です。私たちはアドバイスと、私たちでなければ対応できない部分をサポートするだけです」と、長尾さんは言います。




宮津 花梨さん 静岡県立静岡城北高等学校 グローバル科3年生
「教育に関わるさまざまな立場の人が集まって活動をしている『静岡の未来を拓く会』なら、教育現場の生の声を聞くことができると思い、月例会に参加しました。大人は大人の視点でできることをしています。高校生も、高校生という今しかできないことがあると思い、今回のプロジェクトを提案しました。
実際に活動をしてみて感じたのは、子どもたちが望んでいるのは遊んでくれる年上の友だちのような存在ではないのか、ということです。悩みを相談できる関係になるまでには、遊びや交流を重ねながら信頼関係を築くことも必要です。
私は大学進学で静岡を離れますが、大学では社会福祉学科で子どもに関するホスピタリティ、福祉について学び、将来は学校という枠の外から子どもたちをサポートできる仕事ができたら、と思っています。
今後は後輩たちに活動を引継ぎますが、私のやり方にこだわる必要はなく、自分たちで考えた方向性でイベントを実施していってほしいです」。

望月 瑠花さん 静岡県立静岡城北高等学校 グローバル科2年生
「学校の課題『探究』の私のテーマは、“子どもの孤独感を減らすにはどうしたらよいか”です。『きみの話し相手になり隊』は、宮津さんが教室へ紹介しに来たときに始めて知ったのですが、私のテーマに合った活動だと思い参加しました。
最初は課題の一環として始めましたが、今では小学生と話したり、遊んだりすること自体が楽しいと感じています。この活動を通して、子どもとの関わり方も学ぶことができました。
私の将来の夢は、ディズニーで働くことです。仕事の中で子どもたちと直接関わる機会は多くないかもしれませんが、もし実現できたら、この経験を活かして、全国の子どもたちに元気を届けられるような仕事をしていきたいです」。

苅澤 朱音さん 静岡県立静岡城北高等学校 グローバル科1年生
「宮津さんからメンバー募集のポスターを見せてもらったのが活動に参加するきっかけでした。
当時、ドラマで見た児童相談所の職員に興味を持っていましたが、将来の夢として明確だったわけではなく、子どもに関わって自分の適性を確かめてみたいという気持ちがありました。また、小学生の時に地域の高校生や大学生と話した経験が楽しかったことも、活動の原動力になっています。
参加当初は『小学生が悩みを相談できる存在』を目指していましたが、訪問できる日数が限られていることもあり、現状はまだそこまで至っていません。まずは遊びを通じて打ち解け、悩みも含めて何でも話してもらえるような、当時の私が憧れたお兄さん・お姉さんのような関係を築いていきたいです。そして、大人の活動の中に、自分にできることがあると実感が得られることも嬉しいです。
将来はまだわかりませんが、大学では国際関係について学ぶ予定で、そのためにはさまざまな価値観の人たちと交流が必要になります。この活動の経験はきっと活かされると思います」。


長尾さんは、この活動について次のように話します。
長尾さん「実際にスタッフとして参加した高校生からは、『子どもたちと触れあってみたら幸せだった』という言葉も聞かれて、こうした素直な感想にはっとさせられました。大人になると、なかなか素直に感じることができない感覚かもしれません。この活動を通して、高校生スタッフには、子どもと関わることや誰かの心の支えになることの素晴らしさを実感してほしいです。
今後も、この事業を静岡市の特色ある取り組みとして発展させ、地域に貢献する若者の育成や将来の教育人材の発掘・育成にもつながることを期待しています」。
更新日: 2026/03/30 (月) 16:03